リヴリーの掌編小説

小人の森

リヴリーの掌編小説

祖父母の住む町から車で30分ほどの位置に、小さな森がある。
「小人の森」と呼ばれており、小人を見たという人が後を絶たず不気味ではあるが、おいしい可食キノコがたくさん採れるため人気のスポットでもある。

キノコは食べたいが毒キノコは怖い。
知人に紹介してもらったキノコの専門家とともにキノコ採りへ行くことにした。
「小人って本当に出るんでしょうか」
キノコ専門家のマシュウさんは怖がりのようで、道中でしきりに小人の噂を気にしている。
「小人だかツチノコだか知りませんが、そんなもの出やしませんよ」
マシュウさんの言葉を一笑に付し、私は勇んで森の中へ入っていった。

マシュウさんは怖がりだが、キノコについてはじつによく知っていた。
私たちはカゴいっぱいのキノコを眺めて満ち足りた気持ちになっていた。
「おや、こんなところにも立派なキノコがありましたよ」
切り株に生えていたのは、どこかで見たことのあるようなキノコだった。
もしかすると高価なものかもしれない。
確かめようとしたが、マシュウさんは別のキノコを見つけて離れた場所へ向かってしまった。

ひとつ取ってみると、小麦を焼いたような香ばしいにおいがふわりと広がる。
そのにおいをかいだ瞬間、私はこのキノコを食べてみたいという欲望に抗えなくなった。
大きなキノコを割き、マシュウさんの目を盗んでかけらを口にした。
風味の薄いシイタケといった味で、特別うまいというほどでもない。
やや期待外れだったが、私は気を取り直してマシュウさんに声をかけた。
「そろそろ戻りましょうか」
マシュウさんのもとへ向かおうとした私は、リスのような小動物が足元を横切ったのを見て足を止め、絶叫した。
「こ、こ、小人が」
腰を抜かして座り込んだ私のもとへ駆け寄ったマシュウさんは、私の言葉を聞いて青ざめたが、すぐに笑い出した。
「小人の森というのは、こういうことだったんですね」

Lanmaoa asiatica、ランマオア・アシアティカ。
強い幻覚作用のあるキノコで、加熱せずに食べると小人が見えるのだという。
このキノコを食べたじつに96%もの人が、小さな人が踊ったり列をなす幻覚を見るそうだ。
「よく加熱すれば食べられますよ」
小人の噂が解明され、マシュウさんは心から安堵した様子でそのキノコをカゴに入れた。
「正体がわかっても、私はこりごりです」
笑いながら車へと戻り、エンジンをかけながらふと思った。
「小人の森」というが、あのとき小さな動物もいくつか見えた。
あれも幻覚だったのだろうか。

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