リヴリーの掌編小説

願いを叶えるノート

リヴリーの掌編小説

知人から不思議な話を聞いた。
古い小さなホテルのロビーで営業する喫茶店。
そこには絵の入っていない空の額縁が飾られている。
ホテルのある街はちょっとした観光地で、訪れた客が自由に記入できるノートが置かれていた。
本来は旅の思い出を記すものだが、いつしかこんな噂がまことしやかに流れるようになった。
旅のノートに願いごとを書き込み、空の額縁をのぞき込むと未来が見えるのだという。

見えたとか見えないといった話題で、喫茶店にはひっきりなしに客が訪れる。
「お金持ちになりたい」
「受験に合格しますように」
様々な書き込みのなかには、故人との再会を願う者もあった。
なにもない額縁の中央をのぞき込むと静かに涙を流し、吸い込まれるように額縁の中へ消えていったそうだ。

願いとはなにかを得ることばかりではない。
失うことで願いが叶う者もある。
それは悲しいことなのだろうかと、私はいまもずっと考え続けている。

リヴリーの掌編小説

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