「王女さま、本日は大変珍しいお品をお持ちしました」
「お前はいつもそう言うではないか」
フルールの不満げな声に、フォリスはうやうやしく垂れていた頭を上げた。
「わたくしが世界各地より集めてまいりました希少な品を正当に評価くださる方にこそ、お手に取っていただきたい逸品に存じます。ジャルダン=ダンジュ王国一の欲しがり屋さん…いえ、審美眼を持つ王女さまにふさわしいものと確信しております」
「欲しがり屋だと?」
フルールが目を吊り上げるのを見て、フォリスは再び頭を深々と下げた。が、こらえきれずに漏らした笑いで肩が小さく揺れている。
「我はなんでもかんでも欲しがるわけではないぞ。それに、まだ見ていない。お前がたいそう自信を持っている、その希少な品とやらをな」
いつもこうだ。
フルールは「キィー」と叫び出したいのをこらえて、目の前にかしずく細身の男を睨めつけた。
いや、男なのかどうかもわからない。
ヴァルト神殿に鎮座する美しい彫像を思わせる艶やかで整った面差しに、白馬のたてがみのような輝く髪。
頭を下げたときに長い髪が頬を撫でる様は、さらさらとこぼれ落ちる銀の砂を彷彿とさせる。
カフェ・オ・レイという異国の甘い飲み物に似た薄褐色の肌に、緑柱石のような深い緑の瞳。
まるで妖精のようだと城中の侍女たちが嘆息するのをフルールは知っている。
フォリスは世界を巡りながら絵を描く旅人だった。
訪れた地で手に入れた珍しい品を蒐集家に売ることで生計を立てていたが、ジャルダン=ダンジュ王国の王女であるフルールが無類の宝飾品コレクターであることから、城に招かれるようになった。
人を食ったような態度は癪に障るが、言葉どおり毎回素晴らしい品々を披露するフォリスの目利きをフルールは高く買っている。
それに、フォリスの持ってくる品はただ美しかったり珍しいだけではないのだ。
(つづく)